ずっと冷たい東風が吹き続けています。さすがに今年のお米が心配になってきました。
水戸の西山に浜見台霊園という市営の墓地があります。山を切り開いた広大な緑の空間です。農家の七番目だった父はハナから本家の墓所に入ることは期待せず、ここに一区画を手に入れたのが三十数年前。まだ入ってません。うちの一族は因果と長生きでありまして。先祖伝来の卒塔婆を分けてもらって、盆と彼岸にはとりあえずご先祖を供養しています。
ずっと気になっていたのがこの墓石の周囲。真砂、つまり白い砂を敷いたつもりなのでしょうがすっかり土壌化して雑草大暴れ。墓参りの前の草取りが苦痛になっているんです。
思いっきり背伸びをするスミレ。この霊園は木陰も少なく、お日様大好きなスミレの巨大コロニーと化してます。墓石の隙間、芝地の真ん中、もうやりたい放題。そういえばスミレ類を食草とする南方系の蝶ツマグロヒョウモンの、水戸で最初の繁殖地がここでした。いまではうちの庭にも幼虫いますけど。
ハゲイトウ? だとすればお供えの花からのこぼれダネでしょう。
放っておくと地面を埋め尽くすウラジロチチコグサ。
ヒメムカシヨモギはこのあと高さ2メートルに育ちます。
これ以外にもイネ科やカヤツリグサ科の猛者たち、そして夏にはかのコニシキソウやらなんやら。見栄を張ることを好まない私でさえ、ああみっともないなあという墓所に成り下がります。自分も入ることになる墓です、何とかしなくちゃ。ずっと気がかりでした。見れば周囲のお墓はみな玉石を敷き詰めていて、雑草がうちほどではありません。私も時間ができたことだし、一つ自分でやってみよう。
手順は明快。
① 今ある表土を取り除く。
② 玉石を敷き詰める。
おお簡単じゃん。用意するものは
a 土嚢袋
b 玉石
c スコップ
これまた単純。さあいってみよう。
まず表土をスコップで持ち上げて、土嚢袋に放り込みます。袋2枚で足りるかな、10枚一組でしか売ってなくて無駄なことだなあ…… 始まって5分で大誤算に気づきました。掘った土は空気を含むので、おとなしく地面に収まっていた時より体積が増えるのです。しかもここ数日の雨を吸ってずしりと重い。袋半分でもうかなりの重さになります。車を横付けできる場所ではなく、上り坂を背負って行かねばならない。頼むそこらの猫でいいいから手伝ってくれ、千円出すぞ。…… 結局土嚢袋10枚全部使うことになり、それを車まで全部ひとりで持ち上げました。人生って何なんだろうとふと考えてみたり。
これで午前中が終わりました。いったん昼食を採りに帰宅です。あ、土はちゃんと合法的に処分しましたよ。でも詳しくは聞かないでね。
さて玉石。
海岸にいくらでもあるからそれで調達、なんて発想もふと沸いたりしましたが理性で抑えてホームセンターへ。
お値段も種類もピンキリさまざま。割石よりは玉石のほうがコケが付かない。永くあり続けるものなので少しでもいいものを。
ちょっと高いけどこれ。1平方mで5~6袋というのでまず5袋。結局足りなくてあとでさらに4袋買い足しに行くことになります。でも敷いてみるときれいな石で、まあよかった。
田んぼを作るときは水平に均すことに気を遣うそうですが、ここも同様です。私はバケツで水を撒いて、水が溜まったところから石を撒いて行ってなんとか形にしました。
はい完成。日の傾き具合がおわかりになりますか。結局一日がかりになりました。大事業でした。工事現場のひとって毎日こんななんだ。頭が下がります。と同時に労働の成果が目に見える楽しさを実感です。
日差しはほぼ夏至のそれでしたが冷たい東風のおかげで快適でした。行ったことないけどめりけんのかりほるにあという所では一年中Tシャツの奴とダウン着てる奴が並んで歩いているという。こんな気候なんでしょうかね。行ったことないけど。
運んだ荷物、合計300キロくらいになるんじゃないかな。15キロの玉石が9袋、土嚢袋ははそれより重く感じましたが10袋。全身の筋肉を使いました、ええ全力で。さあ明日の筋肉痛どんなかな。でも体を使うことはキライじゃないなと再確認しました。もしまた仕事に就く機会があるならその道も考えよう。とはいえ。
よく災害現場のニュース映像で、消防団や自衛隊員の人たちが土嚢袋を軽々と運んで積み上げているのを見ますよね。悪天候下、足場も悪いのに。実感しました。あれ、ものすごく大変な作業です。腕力が要る。満杯の土嚢1個30キロはあるんじゃないかな。しかも1個や2個では何の役にも立ちません。何回も何回も運ぶから持久力も要る。何たる金剛力。自衛隊員への尊敬が増しました。これから災害映像見るときは正座しよう。
これでしばらくはお盆前の草むしりは免除でしょう。それは喜ばしいことです。私もいつかここに入るのだろうし、残されたひとに手間を掛けさせたくはありません。ま、50年後くらいのことですが。でも正直言うと、私個人は玉石のきれいなお墓ではなく、野の花の咲き乱れる中で眠りたい。ネアンデルタールという連中は、仲間の遺体を野の花で包んで埋葬したそうです。そんなのでいいんです。私を知る人なら、それもあいつらしいと思ってくれるでしょうから。
↓ 雑草に関する過去記事です。よろしければ。